何が書かれているのかが不明な、書物や古文書は多くあります。
その中でも、ヴォイニッチ手稿はずば抜けて謎が多く、またミステリアスな挿絵が入っていることで、話題になりやすい古文書です。
世界中で解読が行われているのにも関わらず、何が書かれているのか、何を示しているのかが全く分かっていないヴォイニッチ手稿。
フィクションを描いた架空の書物とする人や、並行世界から紛れ込んでしまったとする人など、意見が非常に多くあります。
そんなヴォイニッチ手稿の謎について見ていきましょう。
ヴォイニッチ手稿とは?
ヴォイニッチ手稿が見つかったのは、1912年のイタリア モンドラゴーネ寺院です。
古書収集家である、ウルフリッド・ヴォイニッチが入手したことから始まりました。
実際にその存在が公にされたのは、1915年となっています。
この発見者であるウルフリッド・ヴォイニッチの名前が取られ、ヴォイニッチ手稿と呼ばれています。
また別の呼び名では、ヴォイニッチ写本、ヴォイニック写本と呼ばれることもあります。
ヴォイニッチ手稿の見た目
サイズは23.5cm×16.2cm×5cmと、背表紙の厚い一般的なビジネス書よりも、一周り大きいサイズで羊皮紙に書かれています。
240ページもあり、カラーで描かれているページも多く、左から右へ読むものと推察されています。
作者は不明で、制作されたのは15〜16世紀ごろとみられています。
言語が全くの不明
書かれている言語は全くの未知のもので、公にされた1915年から今までに、数多くの学者や一般人を含め解読を行なっていますが、一定の法則があるらしい程度までしか解読できていません。
様々な言語などと、類似すらしておらず解読者の頭を悩ませています。
幾度となく「解読できた」「自分はなぜか読める」と主張する人物が現れていますが、その度に反論が出たりしていて、正体不明のままとなっています。
挿絵も不明
最大の特徴とも言えるのが挿絵です。
各ページにカラーを使った挿絵が入れられていますが、これらは裸の女性たちや見たこともないような植物が描かれています。
複数の女性たちが水に浸かっているような挿絵やなども複数あり、植物に関しても少々レトロなホラーを感じさせるような挿絵が入れられています。
羊皮紙は1404〜1438年ごろの可能性
放射性炭素年代測定によると、羊皮紙が作られたのは1404〜1438年ごろとされています。
しかし、書かれたのがその頃かと言われると違い、それよりも後ということしか分かっていません。
挿絵に服装などが描かれていたら、ある程度年代を特定することもできたかもしれませんが、女性は裸の状態です。
その点からも、年代特定を難しくしています。
所有者が度々変わっている
確認されている最初の所有者は、錬金術師ゲオルク・バレシュです。
その後友人から友人へと、所有者が変わり、1665〜1666年から200年ほど、記録が存在していません。
その後、一度はローマの図書館にあったとされていて、所有者も数度変わったのちに、モンドラゴーネ寺院へと写されたとされています。
こんなに古い書物の、移動についてここまで詳しく分かっているのもすごいですね。
内容は謎だらけ!読めないヴォイニッチ手稿
ヴォイニッチ手稿が見つかってから、100年余りが経とうとしていますが、未だその内容については分かっていません。
1969年にハンス・P・クラウスによって、イェール大学 バイネキ稀覯本・手稿図書館に寄贈されています。
イェール大学ではネット上で、その全ページをダウンロードできるようになっていて、誰でも謎を紐解くことができます。
イェール大学 ヴォイニッチ手稿ダウンロードページ
非常に鮮明、かつ細かい部分まで見ることができるようになっていますので、一度見てみるのもオススメです。
そんなヴォイニッチ手稿には、様々な説があります。
その一説についてご紹介していきますね。
暗号説
何かの暗号ではないかとされている説です。
イングランドの学者 ロジャー・ベーコンは、ヴォイニッチ手稿の作者の候補ですが、このロジャー・ベーコンが薬草学に関することなどを、宗教的な迫害から守るため、暗号にして記したというものです。
確かに、この説であればすぐに解読されるような暗号では、意味がありませんし、ロジャー・ベーコンが作り込んだ暗号で書いたとも取れます。
知識を守るための手稿だった可能性ですね。
フィクション説
当時の、単に娯楽的な面白い本としての説もあります。
言語に、ある程度の規則性があるのは著者のクセなのか、あえて残したのかは不明ですが、よく分からない文字で書いて、楽しむという本だった可能性もあります。
医学書説
2017年にニコラス・ギブズが提唱した説で、書かれている言語はラテン語の略語で、ヴォイニッチ手稿が制作された、当時の医学書とも類似しているとしています。
医学書であるなら、確かに謎の挿絵も説明がつきますね。
ですが、ラテン語の略語として解読できる部分が少ないなどの批判もある説です。
全てそのまま解読できる、とする説ではないようです。
並行世界から紛れ込んでしまった説
こちらは、都市伝説の中では有名なものですね。
並行世界、8分遅れの世界などから、何らかの原因によって、紛れ込んでしまったという説ですね。
だからこそ、全く解読できない言語が使われているのではないか、とする説です。
逆に、並行世界へ我々の今いる世界から、何か紛れ込んでいるものもあるのかもしれませんね。
この説であれば、他の言語に似ていない、ということの説明をつけることもできますね。
解読を試みた人たちの見解
まだ、誰も解読に成功している人はいないヴォイニッチ手稿ですが、解読を試みた人たちは多くいます。
また解読に成功したと主張する人も多くいますが、実際に全文成功している方はまだいません。
人間だけではなく、最近ではAIによる解読も始まっているようです。
ここからは、実際に様々な角度から解読を試みた人たちは、どのような見解を持っているのかを見ていきましょう。
スティーブン・バックス
2014年に一部解読に成功したと発表したのが、スティーブン・バックスです。
解読の方法は、文字の出現パターンを当てはまめるというものです。
ある程度の言語まで絞り込むことはできましたが、全文解読までは至っていません。
ウィリアム・フリードマン
1945年に暗号の天才と呼ばれる、ウィリアム・フリードマンが解読を行いましたが、成功はできませんでした。
暗号ではなく、人工言語類ではないかとしています。
レオ・レヴィトフ
1987年にレオ・レヴィトフ著書の中で、解読について触れています。
水に浸かっている女性の絵などは12〜13世紀ごろの儀式の様子であり、言語に関してはラフマン語を元にしたクレオール言語としていました。
ですが、不自然な箇所が多くあり、誤りであったとされています。
他にもある未解読の文字
ヴォイニッチ手稿以外にも、同じような状況の未解読の古文書についてもご紹介します。
その謎めいた雰囲気があるため、ヴォイニッチ手稿は取り上げられることが多いですが、他の古文書にも謎が詰まっています。
こちらも見てみましょう。
ファイストスの円盤
ファイストスの円盤は、1908年にクレタ島のファイストス宮殿にて発見されました。
円盤の形をした粘土製のもので、両面に文字がスタンプのようなもので刻まれています。
この円盤に書かれている文字以外見つかっていないことや、ギリシャ語の音節を合わないという点から、解読が難航しています。
細かい絵柄からなる、ファストスの円盤の文字ですが、何が書かれていたのでしょう?
ロンゴロンゴ
19世紀のイースター島で発見された、ロンゴロンゴも未解読の文字です。
正確には文字かどうかも不明で、原文字、もしくは踊りなどを表している図柄の可能性もあるものです。
見つかったロンゴロンゴは、24もの木片に書かれていましたが、損傷しているものも多く解明には至っていません。
また、1行ごとに上下が逆さまになっていて、読むごとに逆さまにしていたのか、そのまま逆さまでも読むことができたのかも謎となっています。
レヒニッツ写本(ローホンク写本)
レヒニッツ市の写本とも呼ばれることがあるレヒニッツ写本は、ハンガリーで発見されました。
12cm×10cmで448枚もの用紙からなる写本で、用紙の年代は1430年ごろとされていますが、実際に製作された時期は不明です。
使われている言語は、全く未知の言語が使われていますが、現在ではハンガリー人のニーリ・アッティラが解読に成功しています。
内容としては、宗教的なことに関する本だったそうです。
ヴォイニッチ手稿を題材にした作品
謎めいた雰囲気のあるヴォイニッチ手稿を題材にしている作品は、多くあります。
怪奇小説家 ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの「クトゥルフ神話」の中で登場する、ネクロノミコンの写本がヴォイニッチ手稿とされています。
現実の、謎の未解読の古文書を登場させるなんて、神秘的ですね。
ネクロノミコンは、ラヴクラフトファンの間では人気も高く、実際のネクロノミコンを再現しようと試みている人も多いそうです。
SF作家のダン・シモンズの「イリアム」の続編「オリュンポス」では、ヴォイニッチ手稿がキーとなります。
このように、現実と絡めたりなどされて題材として使われることもあります。
まとめ
ヴォイニッチ手稿は、その存在からして謎に包まれていますが、挿絵もさることながら何が書かれているのか気になりますね。
100年余りもの間、解読することができなかった古文書ですが、いつか全文解読されてスッキリしたいものですね。
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もしも、タイムトラベルが可能だったら、すぐに解読できるのかもしれません。
タイムトラベルに関する記事は、以下で詳しく紹介しています。
こちらもぜひチェックしてみてください。
参考:タイムトラベルは未来では可能になるのか?タイムトラベルが可能と主張する天才たち
【参考サイト】
ヴォイニッチ手稿(wikipedia)
ファイストスの円盤(wikipedia)
ロンゴロンゴ(wikipedia)
未解読文字(wikipedia)
オーパーツ(wikipedia)
ウルフリッド・ヴォイニッチ(wikipedia)
ロジャー・ベーコン(wikipedia)
クトゥルフ神話(wikipedia)
ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(wikipedia)
ネクロノミコン(wikipedia)
ダン・シモンズ(wikipedia)
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